Archive for the ‘ぼくの本棚’ Category

ぼくの本棚300

論語の読み方/山本七平


06 4月

日本人とは何かを考える時
論語が欠かせないと思う人は多い。

論語は知らないという人でも
「三十にして立つ」「四十にして惑わず」「五十にして天命を知る」
という言葉は耳にしたことがあるはずだ。

論語は2500年前、孔子の死後、弟子との対話をまとめたものだ。

日本でも昭和初期まで四書(論語・中庸・大学・孟子)の一つとして
幼少より暗記することで古典的素養を養ってきた。
残念ながら今、四書が分かる人はほとんどいなくなった。

しかし、今回の東日本大震災を見ても
多くの人が慌てず騒がず、規範に沿った忍耐的行動を発揮したのは
「論語的生き方」が日本人の心にすでに浸透しているからなのだろう。

孔子は学歴が無くても社会人として
りっぱな行動をする人を「学問のある人」と言った。

孔子は、潔癖だがつむじ曲がりではなく、
筋を通すが角が無く、正直だがお人好しではない人を目指した。

逆に
「自信過剰の上に正直さを欠き、田舎者でありながら素朴さが無く、
真面目そうに見えてその場かぎりの人間」
は社会人失格だと切り捨てた。

さらに弟子との対話で
「人徳があると言われながら、実は摩擦を避けている人、
褒められようとしている鼻持ちならない偽物、
誠意なき八方美人、
人の欠点を言いふらす者、
礼儀知らず、
決断力はあるが道理のわからぬ者、
人の言うことを先取りして知者のふりをする人」

さらに

「表面だけを飾るえせ人間は論外である」

つまり、外見ばかり飾り立て、中身の修行をしない人間とは
つきあわない方がいいと言っている。

さて、あなたは孔子と対峙する勇気があるだろうか。
あなたは、自分の中の何を成長させようと考えているだろうか。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚299

ソーシャル・ビジネス革命/ムハマド・ユヌス


04 4月

本書はバングラディッシュでグラミン銀行をつくり
ノーベル賞をとった後のユヌスの新たな挑戦の話だ。

世界の20%の人々は清潔な水が飲めない。
そのため年間200万人の子供が下痢、マラリア、コレラで亡くなる。
多くの科学者は2025年には世界の半分の人が水不足で苦しむと予測している。

アフリカや中国を始め、世界各地で水の問題が深刻化しているが、
さらに今後、水不足が激増し、最も解決が難しい問題の一つになることは明らかだ。

地震や津波もそうだが
テクノロジーがいかに進化しても解決しない問題は次々に起こる。

しかし、問題が発生した時、それに最もふさわしいテクノロジーを的確に選び
統合的な問題の解決ができれば、以前より良くなることもあるのも事実だ。

収入が低い人に安全な水を飲ますことができるか、という難問に
ムハマド・ユヌスはヴェオリアと組み「ヴェオリア・ウオーター」という
ソーシャル・ビジネスを立ち上げることで、この問題に挑戦した。

結果、2008年には126億ユーロの収益をあげた。

「テクノロジーだけでは、大規模な難問は解決できない。
ソーシャル・ビジネスの目的は、万人に対して経済を機能させることだ。
始める際に重要なのは、プロジェクトに乗り気な仲間を早めに何人か集めることだ」
とユヌスは言う。

あなたには、東日本大震災を見て、少しでも現地の経済を活性化する
ビジネスを想像することはできるだろうか。

できるだけ早く、自分の仲間を募ってできる
自分らしいソーシャル・ビジネスを創造することはできないだろうか。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚298

アダム・カヘン/手ごわい問題は、対話で解決する


01 4月

東日本大震災が起きてから、政府の公報が頻繁に行われている。

国のトップが顔を見せないより見せた方がいいのは、
その後の管内閣支持率が微増したことからも明らかだ。

しかし、その本質は一方的に真実を伝える(telling)だけで
他の真実や可能性があることを認めていない。

自分は正しいから自分の話だけ信じてくれ、
という話し方や聴き方は簡単な問題を解決するのに大いに役立つ。

しかし今回のイシューはあまりにも複雑で
単純化しようとするほど真実から離れていくことが多い。

アダム・カヘンは本書の中で、3つの複雑な問題が重なると
解決が困難になると言っている。

3つとは「物理的な複雑性」「生成的な複雑性」「社会的な複雑性」だ。

原因と結果が空間的、時間的に遠く離れているため
全体の問題の把握を困難にしている。

例えば、今回の東日本大震災を例に問題をあげると

1つめに、津波や地震や火事などで失った家屋、建物、船、機械などの物理的な被害。
避難している人はいつまでどこに住むことができるのか。
亡くなった人、行方不明の人をいつ弔えるのか。
普通の生活に戻るのにどうすればいいのか。
いくら必要で資金はどうすればいいのか。
汚染された土地にもう一度住むことができるのか。

2つめに、原発の事故が次々に起きて、始めより事態がどんどん悪くなっていっていること。
汚染がいつまで続くのかわからないこと。
さらにこの先の予測ができないこと。
農作物が風評被害に遭い、新卒の学生は待機難民になり、
あらゆる産業が止まり、業績回復の時期が見えないこと。

3つめに、国の責任、自治体の責任、東電の責任がまだ明らかでないこと。
これから挽回したい企業にとって、電力不足など不安定要因が多いこと。
石油などエネルギーや原料コストが上がり続けていること。
生活の安全が侵され、安心が吹き飛び、
環境汚染がどこまで進むのか予測できないこと。

この混乱の中で、いまリーダーと呼ばれる人たちに、これらの問題の
すべてのマイナスをプラスに変え、皆を勇気づけることができるのだろうか。

利害関係にある多くの人たちが、自利我欲を横に置き、
マインドを解放し、心と思考力を一つに結集し、
安心で安全な、笑顔の見える日本の未来に方向性を集中できるのか。

本書は南アフリカのアパルヘイトやコロンビアの内戦、パレスチナ紛争など
世界的な難題に取りくんだアダム・カヘンならではの智慧に満ちている。

真のリーダーを自認する人には
ぜひ本書を参考に、一つでも問題解決の方向性を
できる限り早く見つけていただきたいと心から願っている。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚297

村上春樹/夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです


16 12月

村上春樹インタビュー集1997-2009

12月の風が
肌と脳を繋ぐ、凍える寒さに変わると
急にウオッカやウイスキーなどの
強い酒で内蔵を暖めたくなる。

そんな時、
村上春樹をふいに読みたくなる。

最初は気がつかずに飲んでしまう強い酒も、
グラスを空けるうちに
普段の自分と違う意識のずれを感じ、
急に酔いが回り始める。

現実と幻想のずれに気づき、
そう思った時にはもう遅い、あの不安定な酔いの感覚が
なんとなく村上春樹の小説に似ているのだ。

本書は、いまさら説明不要の
ノーベル文学賞に最も近い
世界のハルキの貴重なインタビュー集だ。

オウム真理教について60人以上の人にインタビューした
「アンダーグラウンド」を振り返るくだりがある。

「我々自身の中にも、やはり狂気や、
正常ならざるものや、不適当なものはあるかもしれません。
僕は自分の暗闇の中に存在するかもしれない
そのようなものを、もっとよく見てみたいと感じました」

「彼らの話はどれも、僕の心に、頭に、魂に残っています。
僕がその経験から学んだことは、物語というのは、
たとえ見栄えが悪く、スマートでなくても、
もしそれが正直で強いものであれば、きちんとあとまで残る
ということでした」

村上春樹の作品で感じる、現実と夢の狭間に落ちたような、
あの矛盾やリアリティのある心地良さは
こんなところからきている。

あなたは、この便宜的で堕落した矛盾だらけの社会で、
何を夢見て、何に覚醒しているだろうか。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚296

植草一秀/日本の独立


08 12月

植草さんとは、
以前、野村証券の子会社設立パーティーで
僕が挨拶をさせていただいた時、
会長の田淵さんから
野村総研の方だとご紹介いただいただけで
詳しいことは何一つ知らない。

しかし、本書を読むにつれ
エコノミストとしての、植草さんの
深い知識、鋭い情報統合力、未来を読む慧眼さが
今、世の中で役立てられない
日本の政治的環境に、痛みといらだちを感じた。

日本振興銀行を倒産させた木村剛について、
植草さんは、事実が明るみになる以前から、
著書の中で親族への不正融資の疑いを指摘していた。

さらに、竹中平蔵と木村剛が
2002年の小泉政権の中で
「金融再生プログラム」で資本のルールを変えようとし、
銀行の資本不足誘導をした後、
日本のメガバンクを二つに集約し、
米国資本に支配させようと企んでいたことを
本書で詳細に分析している。

本書の内容が真実か定かではないが、
今、あの頃の金融全体を俯瞰しながら考えると
エコノミスト植草の視点には納得がいく点が多い。

本書はこれをどう読み抜くか
という自分のチャレンジにもなる。
金融に関わる方には
是非ご一読いただきたい。

あなたにとって金融の正義とはなんだろうか?

編集長 尾中謙文

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