ぼくの本棚298

アダム・カヘン/手ごわい問題は、対話で解決する

01 4月

東日本大震災が起きてから、政府の公報が頻繁に行われている。

国のトップが顔を見せないより見せた方がいいのは、
その後の管内閣支持率が微増したことからも明らかだ。

しかし、その本質は一方的に真実を伝える(telling)だけで
他の真実や可能性があることを認めていない。

自分は正しいから自分の話だけ信じてくれ、
という話し方や聴き方は簡単な問題を解決するのに大いに役立つ。

しかし今回のイシューはあまりにも複雑で
単純化しようとするほど真実から離れていくことが多い。

アダム・カヘンは本書の中で、3つの複雑な問題が重なると
解決が困難になると言っている。

3つとは「物理的な複雑性」「生成的な複雑性」「社会的な複雑性」だ。

原因と結果が空間的、時間的に遠く離れているため
全体の問題の把握を困難にしている。

例えば、今回の東日本大震災を例に問題をあげると

1つめに、津波や地震や火事などで失った家屋、建物、船、機械などの物理的な被害。
避難している人はいつまでどこに住むことができるのか。
亡くなった人、行方不明の人をいつ弔えるのか。
普通の生活に戻るのにどうすればいいのか。
いくら必要で資金はどうすればいいのか。
汚染された土地にもう一度住むことができるのか。

2つめに、原発の事故が次々に起きて、始めより事態がどんどん悪くなっていっていること。
汚染がいつまで続くのかわからないこと。
さらにこの先の予測ができないこと。
農作物が風評被害に遭い、新卒の学生は待機難民になり、
あらゆる産業が止まり、業績回復の時期が見えないこと。

3つめに、国の責任、自治体の責任、東電の責任がまだ明らかでないこと。
これから挽回したい企業にとって、電力不足など不安定要因が多いこと。
石油などエネルギーや原料コストが上がり続けていること。
生活の安全が侵され、安心が吹き飛び、
環境汚染がどこまで進むのか予測できないこと。

この混乱の中で、いまリーダーと呼ばれる人たちに、これらの問題の
すべてのマイナスをプラスに変え、皆を勇気づけることができるのだろうか。

利害関係にある多くの人たちが、自利我欲を横に置き、
マインドを解放し、心と思考力を一つに結集し、
安心で安全な、笑顔の見える日本の未来に方向性を集中できるのか。

本書は南アフリカのアパルヘイトやコロンビアの内戦、パレスチナ紛争など
世界的な難題に取りくんだアダム・カヘンならではの智慧に満ちている。

真のリーダーを自認する人には
ぜひ本書を参考に、一つでも問題解決の方向性を
できる限り早く見つけていただきたいと心から願っている。

編集長 尾中謙文

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