ぼくの本棚287 : 宗像真紀子/二十歳からの20年間  オウムの青春の魔境を越えて

26 4月

1994年の松本サリン事件(死者8、重軽傷者660人)、
1995年の地下鉄サリン事件(死者13、重軽傷者6300人)から
もう随分と時がたつのに、
あの時の生々しい記憶が一向に消えないのは何故だろうか。

たぶん、僕の脳が知覚している様々な社会的事件の中で、
最もおぞましいと感じているからではないか。

宗像さんはオウム真理教に入信し、信者として深く洗脳され、
ようやく自分を取り戻した時はすでに20年を経過していた。

「毎日、さまざまな種類の薬物が注射され、お酒などの潜在意識に
入りやすいものも試される薬物人体実験が二、三ヶ月続きました」

本書には入信のきっかけから、
その後の20年間の記憶がとても丁寧に扱われている。
時には正確に、時には曖昧に、
本人の感じたまま、時間も歪ませながら書かれている。

「LSDでハイになった直後、温熱修行を行うよう指示されました。
47度の高温の湯に15分間浸かることを10回繰り返すという過酷なもので、
人が付いて監視され、熱くて飛び出しそうになると頭を押さえつけられて、
浴槽に戻されました」

実際に何人も死んだ「修行」のひとつひとつに、
繰り返される洗脳に逆らえない恐ろしさが痛いほど伝わってくる。

「悪行を積んだ魂は地獄に堕ちると言って、
その恐怖により、いまだアレフ教団をやめることが
できない人もたくさんいるのです」

あなたは本書を読んでなお、
オウムにいた人たちを責め続けることができるだろうか。
その時、洗脳状態にいた人たちが、はたして
正常に考え行動することができたのだろうか。

「苦しみを作り出したのも、苦しみから抜け出すことができたのも、
じつはわたし自身の心によっていた」

という宗像さんの告白は、オウムが犯した罪の重さとは別に、
自己への妄想や執着、マインドコントロールとは何かを深く考えさせられる。

編集長 尾中謙文

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