Archive for 2月, 2010

ぼくの本棚280:茂木健一郎/今、ここからすべての場所へ


26 2月

日本で最も著名な脳科学者・茂木さんは脳の可能性を信じる大切さを
世の中にわかりやすく解説し定着させてきた。

僕たちは茂木さんのお陰で、何十年も脳の研究しなくても
脳がどういう働きをして、脳の活性化のために何をすればいいのか、
子供にもわかるような優しさで、誰もがわかるようになった。

最近「格差社会」が進む中で、
夢を持てなくなったという人の話を聞くことが増えた。
「勝ち組と負け組」のように、もう勝負がついているから
望みなど持っても無駄だという人もいる。

しかし、茂木さんの答えは明解だ。

「文化的、社会的文脈においても、
自らの創意工夫によって、未来を形作る余地を信じられなくなってしまった時、
私たちは取り返しのつかない喪失を経験するのではないか。

自分の未来を選び取ることができると信じることを、
そう簡単に失ってはいけない理想であると考えている。
そのような素朴な信仰を失った時、人間は別の何かに堕ちていくのではないか」

夢や理想をなくしてはいけない、人間の創造性を信じる
という茂木さんの力強いメッセージに惹かれるのは僕だけではない。

遺伝子や環境が人間の資質を決めると言うことに
「青年期から反発を感じていた」
という茂木さんの考え方は細胞学者のブルース・リプトンと似ている。

人間が正義と徳のもとに自分らしく生き、
多様な幸福と知性を、努力によって手に入れることは、
もともと可能なのだ。

本書は、これまでの脳科学を中心とした形式的な話ではなく
人間・茂木健一郎の思想の深みや暗黙知が感じられる、
一行たりとも目が離せない良書だ。

あなたの夢がまだ実現せず、もし未来に迷いを感じているなら
ぜひ本書を読んでほしい。
必ず何か答えが見つかるはずだ。

編集長 尾中謙文
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編集局O

ぼくの本棚279 : レイチェル・カーソン/沈黙の春


19 2月

レイチェル・カーソンの言葉は
「影響力」という以上の浸透の仕方で僕の組織の中に入り込んでいる。
鋭利のような鋭さ、ミクロのような繊細さ、人間への深い愛、
地球にむけたやさしさが、美しいセンテンス、文脈すべてから薫ってくる。

「いまや、人間という人間は、母の胎内に宿ったときから
年老いて死ぬまで、恐ろしい化学薬品の呪縛のもとにある。
合成殺虫剤は生物界、無生物界をとわず、いたるところに進出し、
いまでは化学薬品の汚染をこうむらないもの、ところなど、ほとんどない」

レイチェルは本書で農薬問題を告発した。
本書を読んだケネディ大統領が感動し、米国全土で農薬の環境破壊を追求した結果、
環境保護運動は全世界に広がった。

「川という川、地底を流れる地下水もまた汚染している。
十二年もまえに使用した化学薬品は、土壌にしみこんだまま、残滓がみつかる。
魚、鳥、爬虫類、家畜、野生動物のからだも、同じだ。
化学薬品の汚染をまぬがれた動物を探し出すことは難しい。

人里離れた山奥の湖水の魚、鳥の卵、
そして人間自身のからだにも化学薬品の痕跡が見られる。
母乳の中に、まだ生まれる前の子供の組織の中にも
化学薬品が入っている」

本書を執筆中に癌にかかり、レイチェルは死去する。
「センスオブワンダー」を始めとした残された著作は
生物学者という枠を越え、その文章の美しさは類を見ない。

「みんな催眠術にかけられているのか。
よくないものも、有害なものも、仕方ないと受け入れてしまう。
あと何インチかで、環境の破滅という海に溺れてしまうのに、
やっと何とか頭だけしのぐ生活がいいのだ」

本書は読むものではない。味わうものだ。
繰り返し繰り返し味わうことで、レイチェルと同じ風景が見えてくる。
しだいに、未来にむけて何をしなければならないかに気づく。

あなたはどういう未来に生きていたいだろうか。
子供たちのためにどんな未来を残していきたいだろうか。

編集長 尾中謙文
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編集局O

ぼくの本棚278 : 七田眞・つなぶちようじ/胎内記憶


18 2月

先日つなぶちさんとお話をしている時、急に恥ずかしくなった。
つなぶちさんの本を紹介し忘れていたことに気づいてしまったからだ。
しかも、それは僕の愛読書の一冊だったのだ!

読後感がとても衝撃的な一冊だった。内容が鮮烈で実に興味深い。
なにしろ自分が生まれる前に、人にはすでに胎内の記憶があるというのだ。

僕は生まれた瞬間を覚えているという人にまだ会ったことがない。
では生まれる以前の胎内の記憶はどうだろうか。
そんなことを聞いたとたん、眉をしかめて奇妙な顔をするに違いない。

本書は、精神外傷(トラウマ)の専門家が、
深く研究する過程で偶然遭遇したきわめて狭く深い領域だ。

なぜ精神外傷がおきるのか、
催眠や薬を使って過去をどんどん辿っていくと、
やがて誕生以前の記憶につきあたる。
本書ではこれをバース・トラウマと呼んでいる。

例えば
「帝王切開で生まされた人たちは、
自分と他人との関係を的確に把握する能力に欠け、
あたかも世界が欲しいものをなんでも無条件に与え、
育んでくれるものと期待する傾向にある」
また
「全身麻酔で生まれた人は、こらえ性のない人になりやすい」
のだそうだ。

この分娩前後に起きる
トランスパーソナルといわれる自己を越える体験は
人間の五感を越えたところにある
全宇宙や全存在の記憶を内在している。

分娩体験は、宇宙のすべての部分に
経験的に接続できる潜在的可能性を持っていて
全宇宙的ネットワークそのものであると語る本書を
あなたは信じるだろうか、それとも信じないだろうか。

編集長 尾中謙文

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編集局O

ぼくの本棚277 : アリス・シュローダー/スノーボール ウオーレン・バフェット伝(上・下)


11 2月

世界最大の投資会社バークシャー・ハザウェイを持つ

ウオーレン・バフェットについて金融界の人に説明は不要だろう。
確かなことは、世界を見まわして
投資家で彼の右に出る者は未だいないということだ。
バフェットはお金について先見性があるだけでなく
世界最大の慈善家でもある。

バフェットはこれまで自伝は書かないと公言してきた。
本書は自伝より詳細なバフェット全軌跡の
全記録と言っても過言ではない。
そして自伝より確実に面白いと思う。
なぜか。バフェットの考え方の根源がよくわかるからだ。

「棚にささった一冊の本がウオーレンの目に止まった。
「1000ドル儲ける1000の方法」
1000の方法をぜんぶ使えば、100万ドル儲かるということだ。
チャンスがやってきたと本文の1ページに書いてあった。
「小さな資本で自分のビジネスをはじめようとしている
人間にとって、いまのアメリカほど好都合な時期は史上かつてない」
なんと素晴らしい言葉!
「だが、自分から始めないかぎり成功はありえない」

本の中で、複利という発想がきわめて重要だとウオーレンは気づいた。
一定の利率でも複利だと歳月がたてば莫大な額になることが
少額でもひと財産になるうることを示している。

芝生にスノーボールを転がすうちに大きくなるように
数字が掛け合わされて増えるのを、まざまざと思い浮かべることができた」
翌年、ウオーレンは株の投資を始める。彼が11歳の時の話だ。

フォーブスによれば、バフェットの資産は6兆4360億円以上ある。

バフェットはこの資産の85%を慈善団体に寄付すると
2006年に発表して世界中を驚かせた。

投資や買収にかかわる人はぜひ本書を一度は読んでほしい。
お金に興味がある人にも読んで欲しい。
きっと様々な気づきがあるはずだ。

ただし本書は1400ページある。深く読みこなすには
本書と格闘しなければならないことは言うまでもない。

編集長 尾中謙文

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編集局O

ぼくの本棚276:作家の愛したホテル/伊集院 静


05 2月

センスという言葉はこの人のためにあるのだと思う。
本書を読み終えたとたん、僕は急に旅に出たくなった。

「旅はそのつどパリを起点としてはじまり、終わっていた。その間、
私は縁あってちいさなホテルの一室と出逢い、その部屋に長く滞在した」

10年間で400日以上をホテルで過ごした著者が選んだホテルは
街の歴史と一体化した存在感と静けさを持っている。

「私はまだ若く、時折、夕暮れ時にホテルの部屋のむかいのアパートから
夕餉(ゆうしょう)の煙りが立ちのぼり、窓灯りが点って団欒らしき人影が
揺れるのを目にすると淋しい気持ちになったこともあった。
とはいえ内心は、どこかに自分が棲める土地があればすべてを捨てて、
そこで生きてやろうという気概もあった」

パリは孤独になれる良い場所だ。
一人きりになると心の内側に触れ、深い自己と対話する時間がもてる。
真の自己がわかる瞬間があるのだ。

伊集院氏が滞在したホテルは
ホテル・ド・ヴィニー(パリ)、ホテル・ノルマンディ・パリエール(ドーブル)、
ル・マキ(コルシカ島)、ホテル・オルフィラ(マドリード)、ヴィッラ・デステ(コモ湖)、
ザ・グレイン・イーグルス・ホテル(スコットランド)、オリッシポ・ラパ・パレス(リスボン)、
シャトー・マーモント(ロサンゼルス)、サ・ラレイ(マイアミ)、アヌマサ(バリ島)等々

本書にはさらに多くのホテルが写真付きである。
どれも最高にセンスが良いホテルだ。
知っている人には懐かしく感じるだろう。

僕も伊集院氏と同じ時期パリにいた。

あなたには旅をイメージした時、滞在したいホテルがあるだろうか。

編集長 尾中謙文

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編集局O