Archive for 11月, 2009

ぼくの本棚264 : ダライラマ&尾中謙文/Make The Right Choice ダライラマの正しい選択


19 11月

ダライラマ法王との「地球の未来への対話」ー科学と宗教の共鳴ーのミーティングが終わり、少し振り返る時間ができた。

今回の僕のゴールはダライラマ法王からモデレータを引き受けた時から決まっていた。それは参加者が「気づき」という感動を得られるよう、モデレータが仕切らない、整理しないこと。それは何故か?参加者がダライラマ法王や学者の言葉から、一つでも多くの気づきを得ることがこの対話の目的だからだ。

深い気づきは自分を育て、自分の土台をつくる。参加者がいつかこの日を思い出し、モデレータの記憶でも残ろうものなら台無しだ。しかし僕はここから「話さない」という苦行に入ってしまった。

モデレータの仕事は幕が開くまでに9割が終わらなければならない。始まったらモデレータは「場を活かす」だけで仕切らない、陰に徹する。学者との打ち合わせは困難を極めた。まず話す内容を出来る限り微分し、本質にたどりついたら、今度はインテグラルし全体感を創る。2回のプレイベントを合わせれば、4人の学者と打ち合わせた時間は実に50時間以上になった。

まずミーティング全体の設計とテーマを決めた。地球、環境、生命、心の4つ。僕がずっとこれまで追いかけてきたテーマだ。未だ答えがでない、これからも問い続けなければならない永遠のテーマだ。ダライラマ法王が対話する相手として「地球」は竹村真一さん、「環境」は星野克美さん、「生命」は清水博さん、「心」は田坂広志さんという日本を代表する学者を選び、双方快諾いただいた。

困難を極めたはずの打ち合わせは、実は至福の時間でもあった。これまで自分が関わってきたどのミーティングよりエキサイティングで、どの先生もダライラマ法王に「何を問うか」を話を始めると深い思想ににたどり着き、終わるのがお互いにもったいない感じで、深夜に及ぶこともしばしばだった。

しかし実際の時間は各人がたった25分間しかない。「対話」をするために同時通訳の言葉を時間差無しで日本語でスクリーンに映し出し、時間のギャップを無くしたいと考えたが、予算が無く難しいと言われ適時通訳になった。

会場やチケットやステージ作り、ホスピタリティなどは既に決まっていたので、僕の範囲では無かった。僕の仕事はステージ上で行われる対話の内容だった。もともと両国国技館は相撲をやるために作ったもので、音響、照明など諸処の点でミーティングには不向きな会場だった。実際やってみるとステージ上ではお互いの声がまったく聞こえない。国技館はテクニカル的な問題も含め、複数の同時対話には難しい会場だった。

華美華飾を避け、質素にしてほしいという要望で、音楽や派手な登場感やプロの司会や装飾を一切排除しなければならなかった。しかし贅沢を排除することで寂しい感じになってはいけない。僕が創った映像と作曲した音楽ならばということで、イントロダクションだけは僕の映像と音楽を流すことになった。

楽屋裏では一人が一回あたり話す時間を2分半と決めた。同時通訳が伝えやすくするのと、学者なので講義形式にならないように、出来る限りインタラクティブに考えた。登壇者たちは話し始めたら時間がわからなくなるというので、2分半をこえるとモデレータが介入することを皆で決めた。楽屋裏では、登壇ぎりぎりまで皆で打ち合わせをやっていた。

冒頭言ったように、モデレータは一秒でも学者とダライラマを多く対話させ、参加者に多くの気づきを持ち帰ってもらうため、必要な限り自らの言葉を減らした。しかし最後には深く幸福な時間だったと覚醒できるよう、登壇者が話した意図が参加者に「分かる」か「伝わって」いるかどうかの反応を見ながら慎重に進めた。

予想外だったのは登壇者の「問い」が打ち合わせ通りに話せなかったこと。一つはテクニカルトラブル、一つは雰囲気、もう一つは短い時間。どれも慣れている人などそうはいない。全く動じなかったのは田坂さんぐらいだった。ステージ上ではお互いの声が全く聞こえていなかった。あたかもインタラクティブに対話をしているようなタイミングで進めたが、ダライラマ法王は何度も「彼は何と言っているの?」と顔を寄せて聞いてきた。

このつづきは次回に

ということで今回のぼくの本棚は、以前、僕がダライラマ法王に招かれ、インドのダラムサラに行った時に、ダライラマ法王に長時間インタビューを許された貴重なインタビューDVDだ。

人間がさまざまな人生の岐路に立った時、「どういう判断が正しいのか」「それは何故か」を仏教者の頂点に立つダライラマ法王に聞く、不思議な質問集だ。

ダライラマ法王の話す態度には一貫して品位があり、智慧と機智に富み、人を覚醒させる力に溢れている。決断の根拠や意図には人間的な魅力があり、内容は暖かく感動的だ。

ダライラマ法王が話す仏教用語の解説を仏教学者の村山幸徳さんがやっていただいた。さらにこのDVDのためにやっていただいたチベットの秘法「砂マンダラ」を、僧侶たちが作り始めるところから法要の様子までを収録した3枚セットのDVD集だ。

ダライラマ法王はチベットの元首であり、60年以上に渡り世界の全ての人が幸せになるよう行と徳を積んだ仏教者でもある。ダライラマ法王は人間が生きる上での「正しい選択」の方法を知っている。

あなたは人生において、はたして「正しい選択」をしているだろうか。

編集長 尾中謙文

編集局O