ぼくの本棚259:がんと闘った科学者の記録 by 戸塚洋二著・立花隆編

09 6月

本書は戸塚氏のブログを立花氏が本として形にしたものだ。

残念なことに戸塚氏はがんで去年他界した。

戸塚氏は東大の栄誉教授になった物理学者で、

ノーベル賞を受賞した小柴氏が構想したスーパーカミオカンデで、

実際に実験しニュートリノを検出した人だ。

戸塚氏に検出されるまでニュートリノは、

太陽から数百億個が毎秒我々の身体を突き抜けているが、質量や重量が無いと考えられてきた。

ところが戸塚氏が5万トンのカミオカンデで15個の信号を検出した結果、

物理学の歴史が変わってしまった。

戸塚氏はブログの中でニュートリノの研究への情熱を語っている。

「もし太陽のエネルギー発生時にニュートリノが作られていれば、

それらは光の速さで進むので、地球に8分で届きます。

つまり、太陽ニュートリノを観測すれば、

8分前の太陽のエネルギー発生の現場を研究できるではないか。

これが、太陽ニュートリノ研究を始めたきっかけだったのです」

戸塚氏の純粋性に惹かれるのは僕だけではない。

植物の写真がブログの合間を飾る。これほど知性の高い科学者が植物へ愛情をよせ、

神や人の多様性に感動した想いをよせる、なんとも味わいの深いブログだった。

僕は、戸塚氏が撮影したアストランティア・マヨールという宝石のような花の美しさに胸を打たれた。

戸塚氏の死と花の美しさなど何の関係もない。

だが死期を悟った人が、その残り少ない時間の中で、

葛藤と闘いながらも、限りなく純粋に物理学者としての考えを伝え、

生ききった死生観にアストランティアの美しさが重なって見えたのだ。

「自分が存在したことは、何の痕跡も残さずに消えていく」

あなたは自分が何のために生まれ、社会に何を伝え、世界に何を残したいと考えるだろうか。

編集長 尾中謙文

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