Archive for 2月, 2008

ぼくの本棚195:求めない by 加島祥造


28 2月

お金が欲しい人、ものが欲しい人、能力が欲しい人、健康が欲しい人、自由が欲しい人にとって

「求めない」という言葉は、全ての思考を凍らしてしまう強力なパワーがある。

かくいう僕も自己実現のために、欲望願望過多の日々を送っている。

そもそもなぜ人は「求めて」しまうのか。欲望を持つことはいけないことなのか。加島氏は言う。

「五分間、いや三分間でいい。何も求めないでいてごらん。

全身を頭の支配から開放してごらん。すると君は命のままに生きていると知る。

求めないで放っておいても、体はゆったり生きていると知る。」

どうしようか迷った時、求めないと気持ちが楽になるのだという。

確かに自分の力が及ばない、何かの事情で全てを受け容れなければならない時、

誰にも頼れないし、期待もできないし、何も求めていないから、

ようやく雑念を払い率直に事実に向き合える。

なんでも外に求めていた空しさに気づき、自分の内なる陰陽のバランスに気づき、

内なる声に耳を傾けることができる。

それは偶然、全てを「捨てたり」「無くしたり」する機会を得ることで、

本来の自分を取り戻せた時のほっとする、あの感覚に似ているのかもしれない。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚194:孔子/人間、どこまで大きくなれるか by 渋沢栄一


26 2月

今、中国では論語が流行っている。

CCTV(中国版NHK)で論語の読み方の番組を持っている于丹(ウータン)さんが書いた本は、

去年1000万部を売る大ベストセラーになった。孔子は紀元前552年に生まれた。

2500年以上も前の人生訓が今、何故こうも売れるのか。

これは昨今の薬物混入問題とも大きく関係している。

今まさに中国や日本の社会で、人と人を繋ぐ信頼や信用が試されてされている。

孔子が生きた当時、魯の国は秩序が乱れていた。

やがて孔子をもってしても亡命生活を余儀なくされる。

魯を離れた14年に渡る流浪生活の中で、

孔子は道徳に基づいた秩序や理想が最も大切だと気づき、多くの指導者にこれを説いた。

ようやく魯国に帰った時、孔子はすでに70歳になろうとしていた。

論語は一言一句が日常生活の考え方や行動を基本にしており、

哲学書にしては珍しくすぐに役に立つ実用書だ。

本書は渋沢栄一の解説が入り、孔子の考えの裏側まで読むことができる。

あなたにとって世の中の道理とは、物事の物差しとは何だろうか。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚193:縁は異なもの by 河合隼雄/白州正子


21 2月

僕のオフィスがある南青山という地名は、

その昔徳川家の家臣だった青山家の広大なお屋敷の跡地からきている。

大岡昇平の「花影」の主人公のヒモのモデルにもなった、青山家末裔の青山次郎は、

伝統と信用を重んじる骨董の巨人として、今に越えるものがいない。

白州正子の「いまなぜ青山次郎なのか」にもあるが、ものを観る訓練がなされ、贅沢に磨きをかけ、

精神の器が人並はずれて大きく、金儲けをしない人など今の世にはいない。

ましてや小林秀雄に精神的糧を与えられたと言われるほどの真のパトロンである。

本書は僕が敬愛して止まない二人の対談集だ。

美や精神を重んじる、創作の神髄に触れてみたい方には格好の書といえるだろう。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚192:走ることについて語るときに僕の語ること by 村上春樹


18 2月

友人が東京マラソンにでる。先日大阪国際女子マラソンを見ていて、

5000メートルの女王と呼ばれた人が30キロを越えて突然失速した。

中距離走とマラソンは異質のスポーツなのだとわかった。

それくらい失速後の何度も転倒しながらの走りは、

ランナーの不完全さをいやというほど目に焼付けられた。

多くの天才ランナーが、フルマラソンの目に見えないボーダーラインに何故悩み苦しむのか、

少しかいま見えたような気がした。

本書で村上氏は35キロを越えることをテラ・インコグニタ(未踏の大地)と呼んでいる。

「フルマラソンのもっとも苦痛に満ちた部分は35キロを越えてやってくる」のだという。

そこまでして何故走るのか。

素朴な牧人メロスは、妹の結婚式に出るため死刑を三日間猶予され、

全裸で走りに走って、必ず帰るという約束を果たし死刑を免れた。

そんな意味のある走りなど今はほとんど無いだろう。

では、人は走ることに何を求めるのか。

アテネからマラトン村までは、実は42.195キロより2キロ足りない不完全なコースだ。

あなたにとって走ることとは何だろうか。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚191:世界一愚かなお金持ち、日本人 by マダム・ホー


15 2月

マダム・ホーは高校の時渡米し、コーラ一本も買えない貧乏生活から、

20代で一億の不動産を持ち、その後100の不動産を有する投資家になった。

本書は米国における不動産サクセスストーリーの一つだが、お金の哲学書でもある。

ここにはマダム・ホーの経験でなければ得られない、生きた智慧がある。

ホーは「信用こそがお金のなる木」だという。

家柄、学歴、人種、外見など関係なく、どのように人と接して生きてきたか、

信用をどれだけ積み重ねられたかが「真の豊かさ」だという。

日本人でありながら、華僑のお金持ちの生き方を学び、

お金で買えるものと買えないものの違いがわかるホーだからこそ、

この言葉にはただならぬ重みを感じる。

目の前にある困難に「自分にはできる、乗り越えられる」と信じることが出来る人だけが、

天から祝福を受け、幸せが倍になるとホーは言う。

「命の次に大切なものはお金」とひたすらお金儲けだけに奔走する日本人の姿は、

いつまでも真に大切なものに気づかない、愚か者に見えるのだろうか。

編集長 尾中謙文

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