Archive for 12月, 2007

ぼくの本棚177:日本人のしきたり by 飯倉晴武


28 12月

今年もいろいろなことがあった。来る2008年の干支は子(ね)になる。

子は物事が終了して一から始まることを意味する。

干支に限らず日本人の生活の中には様々な意味が隠されている。

例えば正月に供える二段の鏡もちは、円い鏡の形に似ているところから呼ばれていると思うが、

実は人の魂や心臓を真似てまるく作ったことが始まりだ。二つ重ねるのは陰陽を表している。

元旦に飲む甘いお屠蘇も元々は薬酒で、めでたいから飲む日本酒とは違い

「悪鬼を屠り(ほふり)死者を蘇らせる」つまり不老長寿の意味として飲んでいたのだ。

正月七日に七草(セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ)がゆを食べるのも、

栄養補給をすると一年間病気にならないからで、

正月の暴飲暴食で七日頃に胃腸にやさしい食物を摂りたくなるからではない。

本書には行事・縁起などに隠された意味がたくさんあり読むほどに楽しい。

日本のしきたりをまだ知らないという貴兄には正月というタイミングはいい機会だろう。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚176:ツアラトウストラはかく語りき by ニーチェ


25 12月

本書に出てくるツアラトウストラとは、ゾロアスターの古イラン語(ザイスシュトラ)のドイツ語読みで、

紀元前1400年頃の古代イランの拝火教(ゾロアスター教)の教祖のことである。

二元論、天使や悪魔といったイメージを発明し、仏教やユダヤ教に影響を与えた人だ。

ゾロアスターは司祭(マギ僧)の師でもある。

マギ僧とはキリストが生まれた時、生誕を祝いに来るお坊さん・東方三博士だ。

マギはマジックの語源だともいうが司祭は魔法を操っていたのかもしれない。

キューブリックの名作「2001年宇宙への旅」でも冒頭流れる曲が

シュトラウスの「ツアラトウストラはかく語りき」だった。

多くの時代にわたり多大な影響を与え続けているツアラトウストラとは何者なのか。

神や権威に立ち向かう超人、キリスト教道徳を否定し、

人々は神ではなく縁や愛によって繋がっているという考え方はニーチェが本書によって確立した。

時間がたっぷりあるときに是非、本書と格闘して欲しい。

ニーチェは40歳の時に本書を自費出版した。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚175:憲法九条を世界遺産に by 太田光・中沢新一


21 12月

本書は芸人・太田光が直観で感じるものや大衆が共感するものをお題として振り出し、

宗教学者・中沢新一が知識・情報をベースに太田の話題を象徴的に記号化したり、

連鎖的に展開させる構成になっている。憲法九条については特段の新しい話も解釈も無い。

しかし太田という芸人の素晴らしさは、感情の揺れや機微の察知に特殊な能力を発揮する。

「僕は何年か前に、オウムに与えた影響について、中沢さんに聞いたことがあります。

そうしたら、自分のつくり出した思想や書物が、その先影響を与えたことに関しては

気にしないとおっしゃった」と誰もが聞けない話題に介入する絶妙のタイミングをみせる。

これは中沢の応えの限界点まで配慮した太田の知的パフォーマンスなのだということに気づく。

中沢の底知れぬ知識と認識力を徹底して引き出す。

そして目的を正当化する大義のように、人間がうまく扱えない価値観ほど

時代の中でダイナミックに動くのだということを、あらためて二人の会話を通じて認識するのだ。

編集長 尾中謙文

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編集局O

ぼくの本棚 174:快楽は悪か by 植島啓司


20 12月

宗教学者の植島さんとはもう随分お会いしていない。

どれくらい前かというと、オウム真理教のサリン事件が起きて、

オウムを擁護した宗教学者のN氏が許せんと僕が息巻いて、表に出て来ないN氏に電話をし、

やっぱり出て来ないので植島さんと大阪の屋台で飲んで絡んでいた頃だ。

その頃の植島さんのカッコよさはちょっと枯れたワルな感じと柔軟な知性だった。

いずれにしても日本の宗教学者には無い匂いだった。

植島さんは「宗教学者というのは、全人類が宗教に帰依したとしても、

そこからはみでる最後のひとりでなければならない」と言っている。

本書では、大学教授にしては大いにはみだしたキャラを発揮して

「快楽とは悪か、悪徳とは何か」と欲望をひたすら抑制する日本社会に対して、

真摯な問いを突き付けている。あなたにとって快楽とは何だろうか。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚 173:ソクラテスの弁明・クリトン by プラトン


19 12月

紀元前339年アテナイで最も偉大な哲人であり政治家だったソクラテスは、

これまでの神々を否定し新しい神を論じ青年を腐敗せしめた、という理由で死刑を宣告される。

弟子のプラトンはこれに大いなる疑問を持ち、

法廷で裁判官に対し自己の正しさを説くソクラテスの姿と、

獄中ソクラテスに脱獄を勧めるクリトンから聞いた話をもとに処刑後出版したのが本書である。

身に迫る死の危険を顧みず、泣きわめいたりせず、堂々と真理を述べるソクラテスの姿は、

TVの国会中継で承認喚問される政治家や官僚に見慣れた人には新鮮に映るだろう。

真に国を守るとはどういうことなのか、2千年以上前の政治家がすでに身をもって我々に示している。

編集長 尾中謙文

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