Archive for 7月, 2007

ぼくの本棚 123:超・格差社会アメリカの真実 by 小林由美


20 7月

米国では富の60%がたった5%の富裕者に集中している一方で、貧困層は30%という超格差社会だ。

しかし日本もやがてこうなる可能性がある。

アメリカンドリームと金権の体質に、

1980年代以降起きた日本のバブルと金権の体質が酷似しているからだ。

特に「メイキングマネー」こそが尊敬に値する米国文化はここ10年で確実に日本にも浸透した。

「お金で買えないモノは無い」という言葉に反応する若者はあとを断たない。

しかも富と権力の集中で、再配分される富は小さくなる一方で、

格差の進行を止める手立ては今のところ無い。

原因は実利を追い求める米国の学校教育にある。

学歴と所得水準との関係は疑うべくもないが、

情報技術革新や労働単純化が労働格差に拍車をかけているのだ。

デジタルデバイドは日本でも始まっていて、上場企業でパソコンを扱えない人を探すのは難しい。

よくできた共産主義的日本社会が確実に崩壊しつつある中、

「ノブレスオブリージュ」のように、富を持つ者が貧困層にしなければならない義務や、

貧富に関係なくモラル、プライドを持ち、感動したり体験することで、

一度しかない人生を味わうことに気づかせる教育こそが必要なのだ。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚 122:ヒラリーとライス アメリカを動かす女たちの素顔 by 岸本裕紀子


19 7月

元ファーストレディにして弁護士というダブルメジャーのヒラリーと、

黒人にして女性スタッフというダブルマイノリティのライスが互角に扱われるのは、

米国ならではの実力主義ということなのか。

スタンフォード大の教授だったライスが国務長官になっていく

サクセスストーリーはとてもエキサイティングだし、

ヒラリーがビル・クリントンをつくり米国を裏から動かしていたのは周知の事実だ。

しかし本書で秀逸なのは、むしろクリントンに関する詳細なバックサイドストーリーだ。

「クリントンの父は彼がまだ母親の胎内にいるとき、交通事故で亡くなった。

母は看護婦だったが、看護婦の高等教育を受けるため、

一歳になった息子をガソリンスタンド兼よろず屋を営んでいた祖父母に預けた。

4歳のとき、母はセールスマンをしていたロジャー・クリントンという男と再婚する。

しかし新しい夫は酒乱で暴力をふるう男で、

クリントンと幼い弟は毎晩聞こえてくる両親の喧嘩に耐えていたという」

大統領の知られざる事実が本書で十分味わえるはずだ。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚 121:世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す by ジョセフ・E・スティグリッツ


17 7月

ナイキがコストダウンのため、途上国の工場で子供を奴隷のように働かせている、

というニュースが世界中を駆け巡ったことはまだ記憶に新しい。

中国とインドを除くほとんどの途上国は、グローバル化による恩恵を得ていない。

ではグローバリゼーションは先進国と途上国に何をもたらしたのか。

先進国だけが利益を享受し、貧困が病気のように途上国に蔓延する現実を直視しないかぎり、

答えはでない。著者のスティグリッツ氏はノーベル賞を受賞した経済学者だ。

「多くの場合、開発の段階がかなり進んでからでないと、

途上国企業が外国企業と競争するのは不可能だ。各国が比較優位を生かすよう努めれば、

既存の資源からもっと多くの製品を生産できる、と自由貿易擁護派は主張する。

しかし、途上国がどれだけ早く成長できるかは、

どれだけ早く先進国の知識と技術を習得できるかに左右される」

と知識格差を縮小することが最も重要だと言う。

しかし、日本もうかうかすると、インフラがあるのに知識格差で貧富の差が拡大する、

ミクロ経済の現代病が蔓延するかもしれない。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚 120:ノーザンライツ by 星野道夫


13 7月

カムチャッカ半島でクマに襲われ逝去した、写真家・文筆家の星野道夫氏の本を時々読み返すと、

星野氏がまだどこかで生きているような気がする。

時空を超えた瑞々しさと、正直で清涼感に溢れた文体に触れると、

アラスカの蒼い空のように、心が清々しい気持ちになる。

星野氏による正確なドキュメントは、時に震え上がるような未来を暗示する。

核実験による放射能がカリブーを侵し、それを食べたエスキモーの身体から放射能が見つかるのだ。

放射能がゆっくり全生態系を侵すという、不安な未来を予見しながら、どうすることもできず、

ただそこを去って行くだけの、エスキモーより先の見えない不安な自分の未来を静かに内観している。

本書を読むと、CO2が増え、放射能に汚れた大気とともに、このまま生き続けていることが、

明らかに地球的生き方に逆行している、という感情が沸々と湧き上がって来るのだ。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚 119:JAZZはこの一曲から聴け!マイ・フェイバリット・アルバム100 by 寺島靖国


12 7月

その昔、上野の某ジャズ喫茶でリクエストをすると、その頃僕にはまだジャズの知識もセンスも無く、

マスターはなかなかリクエストをかけてくれなかった。

後に、ジャズ喫茶で曲をかける順番には、場の空気を読んだセンスが大切だということを知った。

そんな難解なジャズ入門は、ショップのレコメンを読んで、まずレコードを買うことで始まった。

ところが聴いてみて驚いたことに、書く人のセンスによって、自分を鏡に映すように、

評価とレコードの内容がくい違うことに気が付いた。

ジャズを知ることは、人生と一緒で失敗の連続だった。

しかし、ジャズ通の選者が気合いを入れて書いたレコメンデーションとなればちょっと違う。

寺島氏はジャズ喫茶を自ら経営し、スイングジャーナルにジャズ論を書き、

行間からスイングが漂う、愛すべきジャズフリーカーだ。

ジャズを聴いたことが無い人にも、是非、聴く前に読んで欲しい一冊だ。

編集長 尾中謙文

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