Archive for 7月, 2007

ぼくの本棚 128:考えることの科学 by 市川伸一


30 7月

不確定要素の多い現実で、人は何を根拠に直感的な判断を下しているのだろうか。

キーワードは「ヒューリスティックス」にある。

結果が必ず正解になるアルゴリズムに対して、

「ヒューリスティックスは、常に正解に至るわけではないが、

多くの場合、楽に速く正解を見つけられる」

つまり人が経験値から得たものをうまくやって、良い結果が得られるショートカットがこれだ。

達人ほど集中するポイントをきちんと押さえているため、直感的で素早くロスが無い。

これは人口知能には無い領域で、コンピュータ万能の時代で、

人をいかに生かすかという未来学を考える上でも重要だ。

「不確かな状況で、人間がどんな推論過程を経て何らかの判断を下すかという、

非常に広い領域を視野に入れたものである」

視野が狭く文脈を感じ取れない日本人が増えている一方で、

マクロに通じ、直感が働く人はますます減っていくのだろうか。

編集長 尾中謙文

にほんブログ村 本ブログへ

編集局

ぼくの本棚 127:宇宙樹cosmic tree by 竹村真一


27 7月

竹村氏の言葉は限りなく美しい。

それでいて核心をみごとに射ぬいているから、読後に清涼が残る。

本書は人間と植物の共生について書かれた文明論だ。

「宇宙器官としての樹木」という章で

「私たちの身体もその70%が水であり、歩く水袋のようなものだが、

樹木の場合はことさらに水が地面から大きく伸び上がり、

手を一杯にひろげて自らを成就するような垂直性の歓びを表現しているように感じられる」

と人間も樹木も組成しているのは水であると言っている。

竹村氏は春先、太い樹木に耳をあてるとゴボゴボと音をたてて水が立ち昇ったというが、

僕が子供の頃聴いた大樹の音は、まるで雨期の後の急流の川のようにゴーっという轟音で、

動かない大樹が生き物として急に怖い存在に変わり、近づけなくなった記憶がある。

本書は植物という形を借りた宇宙的知性と人間との関係性について

新たな文明の尺度を我々に教えてくれる。

編集長 尾中謙文

にほんブログ村 本ブログへ

編集局

ぼくの本棚 126:コカ・コーラ帝国の興亡 by マーク・ペンダグラスト


25 7月

世界で最も有名な炭酸水、コカ・コーラは1885年アメリカの薬局で生まれた。

その時代よくあった、いんちき売薬時代の万能薬の一つとして。

様々な時代を経て商品は形を変え、世界最大の消費量を誇る清涼飲料水になった。

なにしろ一秒間に4万本が飲まれているのだ。

コカ・コーラは1929年、タイムズスクエアの巨大なネオンサインに登場したのを始めとして、

マーケティング、PR、プロモーション、デザインなど広告のあらゆる原型を創った。

広告に登場したスターはクラーク・ゲーブル、グレタ・ガルボ、ケーリー・グラントなどトップスターばかり。

第二次大戦中は、アイゼンハワーが政府の金で、

世界中の兵士たちに100億本のコカ・コーラを提供し、

毎日のように飲み続けて中毒になった帰還兵によって、

戦後のコカ・コーラ需要は爆発的に拡大した。

その後TVCMを中心にした世界の炭酸水市場戦争は、

コカ・コーラとペプシの泥沼の戦いに突入していく。

編集長 尾中謙文

にほんブログ村 本ブログへ

編集局

ぼくの本棚 125:秘すれば花 by 渡辺淳一


24 7月

「風姿花伝」は父、観阿弥の教えを世阿弥がまとめた室町時代の能の聖典である。

時の流れには男時女時(おどきめどき)があると観阿弥は言う。

男時は万事つきに恵まれていて、何をやってもうまくいく時である。

逆に女時はどんなに努力してもうまくいかない、つきに見放されている。

こうした努力と関係ない、時の巡り合わせを良く理解し、時に無理して逆らわず、

ここぞという時が来たら溜めていたエネルギーを一気に出すことが懸命だと言う。

「この緩急の妙が、時のつきを自分に引き寄せることにつながる」といった

「能」の奥義だけにしておくのはもったいない秘伝の数々が本書には満載だ。

いかに大衆を魅了し、花のある存在でありつづけるかは今も昔も変わりがない。

編集長 尾中謙文

にほんブログ村 本ブログへ

編集局

ぼくの本棚 124:「エンタメ」の夜明け by 馬場康夫


23 7月

80年代から90年代にかけて、老若男女の多くはホイチョイにお世話になった。

なにしろ笑いのセンスがいい。

馬場氏はホイチョイプロダクションズのメンバーとして

「人を楽しませるとはこういうこと」の見本を漫画を通じて、

長年休まず発信し続けた類い稀なる才能の持ち主だ。

その馬場氏が3人のプロデューサーについて語る話だから面白くない訳が無い。

本書の主人公、電通ラテ局の小谷正一、小谷の部下の堀貞一郎、

ウオルター・ディズニーの3人は、見えない糸で繋がっている。

ラジオ・テレビ・万博・ディズニーランドなど、

昭和のエンターテインメント・ビジネスの夜明けとなる初めの一歩が本書には標されている。

昭和生まれの人には懐かしく心地良い時代のエピソードが満載だ。

編集長 尾中謙文

にほんブログ村 本ブログへ

編集局