Archive for 6月, 2007

ぼくの本棚 111:金融工学者 フィッシャー・ブラック by ペリー・メーリング


28 6月

「期待リターンの変動に関するわれわれの予想は、笑いたくなるほどお粗末」

と言い切ったブラックによって、世界のファイナンス理論は変わった。それもたった一本の数式で。

1972年、ブラックは自分がギャンブラーになるのではなく、ギャンブラーに情報を売ることにした。

「ブラックは、自分の表を使ってオプションのポートフォリオを

うまく構築するやり方(割安のオプションを買い、割高のオプションを売る)を

アドバイスすることになった。

それからまた、表を使えば株より割安な代替投資対象としてオプションを

活用するタイミング(ロングでは割安なオプションを買い、ショートでは割高なオプションを売る)が

わかることも、さらにまた、リスクの高い裁定取引を採り入れる戦略

(割安なオプションに株のショート・ポジションを組み合わせるか、

株のロング・ポジションに対して割高なオプションを売る)も教える羽目になった」

学者と現場が近いほど、その数式には臨場感があり、

おそらくは権威に近いほど、現場で起きている兆しは見えない。

ブラックはノーベル賞に値する革命的な数式を残したが、57歳の若さで世を去った。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚 110:本間宗久相場三昧伝 相場道の極意 by 本間宗久


27 6月

本間宗久は江戸時代、米取引で連戦連勝し「相場の神様」といわれた勝負師である。

本書は八十九章からなる宗久の秘伝書で、

経験値と勝負勘の示唆は、相場に馴染みが無い人でも興味深い。

「相場が段々熱狂してくると、自分もこの人気に乗じて、今買わなきゃと思うようになるが、

こういう時は急拠、心を転じ、売りに回ることが必要。

人気に逆らうわけだから、火の中に飛び込む思いだが、これが成功につながる。

皆が皆、西に行けば、自分は東に行く。つまり、人気の逆に行くことが利運への道だ」

真逆を信じて進む勇気と、情報に裏付けられた戦略こそが、

いつの世でも出来そうで出来ない極意なのかもしれない。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚 109:神社の系譜 なぜそこにあるのか by 宮本健次


26 6月

古代日本では日祀部、日置部といった人々が各地に派遣され、

東西線、南北線によって村を定め、日の三天(夏至、春分、冬至の太陽の運行)を測って暦を定めた。

元来、神社は本殿などなく、山や木や石などで祭祀を行い、自然の中に神が宿ると信じられてきた。

日本の八百万の神などに言い表されているように、

大自然の多様性がそのまま神という存在でもあったのだ。

本書はそうした神や神社の本質を学べるだけでなく、東京にまつわる首塚伝説など、

多方面の、雑学本来の楽しさに触れながら、日本を再発見できる良書だ。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚 108:自壊する帝国 by 佐藤優


25 6月

前作「国家の罠−外務省のラスプーチンと呼ばれて」から本書まで、

内容が事実だとすれば、佐藤氏の持つロシア近隣の情報を収集する才能と、

情報操作のノウハウを日本は利用しきれていない。

本書を読むと佐藤氏がいた部署は、皇太子妃がいた北米2課を含め、

情報を表面に出さない方が国益になるのは間違いない。

「週明けに大使館に「戦利品」を持っていくと、上司たちは驚いた。

私はどのような場所でこれらの資料を入手したかを説明した。

あぶないからそのような場所に出入りするなとの注意をされるのではないかと

少し心配していたが、異論派の情報に日本大使館は弱い。

アメリカや西ドイツの外交官は異論派と付き合って

いろいろな情報を取っているので、関係をうまく続けて欲しいと言われた」

インテリジェンスに関わる仕事は、情報を扱うセンスが問われる高度な技術職だ。

特に今後は、テロ、大量破壊兵器、麻薬、コンピュータ犯罪など、

以前より難しさが増している問題を、

状況判断で個々に技術処理できる才能を持った人材が必要になる。

スパイ天国日本において、諜報機関の設立が急務なことは周知の事実だが、

国会の幼稚なドタバタ劇を見るかぎり、この国ではまだ当分のあいだ絶望的と言わざるを得ない。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚 107:ぼくの哲学 by アンディ・ウオーホル


22 6月

以前、インドのダラムサラでダライラマ14世と会った時、チベットの実物のマンダラを初めて見て

「なんだウオーホルじゃないか」と思ったことがある。

もちろんウオーホルがマンダラの影響を受けたのだが。

曼陀羅は陽(理性や論理)のエネルギーと陰(感情や生産)のエネルギーをフラクタルに描き、

仏的な宇宙観を表現している。

ウオーホルが選ぶオーガニックなデザインの素材も、

生命感や具体性を消すデザイン表現によって、乾いた抽象的な美が生まれる。

流体的、非定形、自然造形的な偶然的形体すら、

ウオーホルは独自のセンスでパターン化し、生命的躍動感を消してしまう。

サンプリングによる、視覚的退色感と模倣的プラスティック感の生みだす快感とでもいうのだろうか。

本書はそうしたウオーホルのデザインへの疑問やもどかしさを解消してくれる、

ウオーホルの美意識の集大成といってよい。

彼の生き方や考え方が、好き嫌いは別にして、比類なき独自性を生みだしているのは確かだ。

編集長 尾中謙文

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