Archive for 5月, 2007

ぼくの本棚 94:現代人のための「チベット死者の書」 by ロバート・A・F・サーマン


31 5月

人は必ずいつか死を迎える。

死後の先には何があるのか。

死に至るまでいかに健康的に生きられるか。

人間らしく死ねるか。

チベット人は死について徹底的な研究をして膨大な文献にまとめた。

それが「死者の書」である。

「死者の書」はエジプトのものだけだと思われる方が多いが、

本書はチベットの話でエジプトとは全く関係ない。

本書は解脱における三つの知性が書かれている。

第一に、48種の静寂な知性と52種の活動的な知性を、

曼陀羅の形式美に表現した、密教の体系があること。

第二に、純粋な知性に侵入する瞑想法として、

突破型と飛躍型があり、その先で純粋知性を悟れること。

第三に、死に際した身体の変化と心の変化を、両面から詳細に知識体系化していること。

日本の年間の自殺者数はイラク戦争の戦死者より多いことはご存じだろうか。

死について深く考え、今、この一瞬を生き抜くことが、死の恐怖から開放される、

ということは、すでに多くの先達が言っている。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚 93:ウエブ仮想社会「セカンドライフ」 by 浅枝大志


30 5月

もう「セカンドライフ」には入られただろうか。

「セカンドライフ」とは世界中のネット住人が次々に移住している、

ネット上につくられた3D仮想空間のことである。

この中はすでにボーダレスでグローバルだ。

アバター(3Dの中の自分)で自由に動き回り、チャットで会話もでき、

同時間を共有できるため、他のユーザーと会うこともできる。

リンデン・ドル(仮想マネー)を使えば、不動産や洋服の売買などビジネスもできる。

実際の通貨に換金できるため、すでに億単位で稼いでる強者もいる。

アディダス、トヨタ、日産、IBMなど大企業も続々、ビジネスネタを探しに来ている。

一攫千金を狙うパイレーツたちは、宝くじなどに他者依存することなく、

今のうち是非チャレンジしてほしい。今なら自分の手で稼げるはずだ。急げ!

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚 92:自分の体で実験したい by レスリー・デンディ


29 5月

放射線療法は、今では誰もが知る治療法のひとつだが、

かつて治験(人を使った実験)がまだ無かった頃、キュリー夫妻は自分たちを実験台にしていた。

「ピエールはさっそく自分の体で試してみようと、腕にテープでラジウム塩を貼つけた。

それを10時間放置しておいたことろ、まもなく切手大のただれができて、

数日で傷口から膿みがしみ出した。ただれは52日後に治り、皮膚は元どおりになった」

キュリー夫妻の発見がきっかけとなって、腫瘍患者の治療にラジウムが使われるようになる。

マリー・キュリーは長年の実験での放射線被爆による白血病で亡くなるが、

彼女のノートは今もなおパリのフランス国立図書館に保管され、希望すれば誰もが読める。

ただし、今も微量の放射線が出ているため、図書館を訴えないというサインをすればの話だが。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚 91:オシムが語る by 木村元彦監修 シュテファン・シェンナッハ/エルンスト・ドラクスル


28 5月

サッカーファン以外にはあまり知られていないが、オシムの半生は壮絶だ。

オシムがギリシャでサッカーをやっている時、祖国サラエボでは戦争が勃発していた。

「最悪だったのは、妻と娘が生きているのか、どうやって生活しているのか、

知るすべもなかったことだ。ニュースの報道ひとつひとつ、

戦争に関する新聞の見出しひとつひとつがどうしようもない苦痛、容赦ない責め苦となった」

オシムがアテネとグラーツを選んだ理由も、

ギリシャとオーストリアならサラエボに電話が繋がりやすいと考えたからだ。

しかしこの二国に限って、皮肉にも直通電話が無かった。

「アシマと娘イルマはサラエボで持ちこたえていた。

やがて、通りに死体が転がっているのが当り前になった。

毎日の水汲みはまさに命がけのゲームだ」

アシマとイルマは、オシムがヘリで脱出の手配をしたが、サラエボを離れようとはしなかった。

侵略に屈するのが嫌だったのだ。

3年後ようやく妻は国連防護軍の輸送機でウイーンに脱出したが、娘は戦争終結までがんばった。

「私を哲学者にしたのは教科書ではなく人生だ」

オシムの言葉に重みがあるのは、こんな人生を生きているからなのだ。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚 90:世界で一番売れている薬 by 山内喜美子


25 5月

本書は薬の宣伝ではない。

「スタチン」という高脂血症治療薬の新薬開発プロセスのドキュメンタリーである。

スタチンは血液中コレステロール濃度を下げる薬だ。

どれくらい売れているかというと、世界でスタチン市場は2兆8千億円もある。

なぜこんなに売れているのか。理由は簡単だ。

死亡原因の上位となる「心筋梗塞」や「脳血栓」になった人はスタチンがないと治らないからだ。

サイレントキラー(沈黙の殺人者)と呼ばれる高脂血症は自覚症状が無く、

密かに進行して、発症した時はすでにアウトという恐ろしい病だ。

日本では600万人が治療しているが、今後メタボな生活習慣病が進めば、

さらに増えることは疑う余地が無い。

スタチンは30年前、遠藤博士が青カビから発見したが、

商品化したのは日本ではなく、米国大手の製薬会社だった。

本書を読むと、一つの薬が製品化されることがいかに大変かがよくわかる。

「動脈硬化のペニシリン」と呼ばれながら、遠藤博士は未だノーベル賞をもらってはいない。

編集長 尾中謙文

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