Archive for 3月, 2007

ぼくの本棚 48:日本はなぜここまで壊れたのか by マークス寿子


23 3月

海外移住者が増えている。日本に魅力が無くなったのか。目を背けたくなるような事件が頻発し、多様な不安と共存せざるを得なくなっている日本。金がすべてという価値観と、みかけが大切というモラルに、品格のかけらも無いブランド狂奔。お笑いの少子化対策。イラク戦争より多い自殺者。本書は目で文字を追いながら、心と耳が痛い体験をさせられる。しかし逃げてはいられない。日本で暮らして行く以上、少しでも住みやすく、気持ちの良いところにしたいと願うのは僕だけではない。本書はなんとなく不安に感じながらも、先送りしてきた課題を著者の細やかな視点で、鮮やかに一刀両断にしてくれる。すべての政治に関わる人、これを読んですぐに走れますか?そういう人を選挙で選べる目がありますか?

編集長 尾中昭文

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ぼくの本棚 47:苔のむすまで by 杉本博司


22 3月

NY在住のアーティスト杉本氏はただものではない。一万年以上の歴史観を持ち、神とは何かについて人に伝える術を知っている。たった一つの言葉で呪縛が解かれたり、ビジュアルとの出会いで閃きを与えられたりすることは、一生の間に偶然、何度か思いがけずある。杉本氏の中にはアートが生まれる根源的な時代、場所、人の位相の扉が多元的無数にあり、今そこに存在している。「最も古いものが、最も新しいものに変わる」のは、そのせいだ。杉本氏の生み出すものは境目が無く制限も無い。美しいものが必然的に美しくある。しかし、その厳しく隙間の無い美とは対称的に、言葉にならない優しい暗黙知が読後に薫る。美の心地良さ、暖かい安堵感を陰陽に生み出すアーティストを、杉本氏以外に僕は知らない。

編集長 尾中昭文

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ぼくの本棚 46:木を見る西洋人 森を見る東洋人 by リチャード・E・ニスベット


20 3月

人の思考の本質は本当に世界共通ではないのだろうか。よく米国人は大雑把だとか、中国人は商売上手だとか、韓国人は、北朝鮮人は、関西人は、京都人は、など地政学的な意味や、土地や国に依存するイメージを「人」に持つことが多い。でも本当にそうなのだろうか。本書は思考の違いが生まれた社会的背景のデータを科学的態度で解析している。「なぜ古代中国人は、代数や算術には秀でていたのに、ギリシア人が得意とした幾何学に弱かったのか」本書は長年にわたり歴史学者、心理学者、科学者、哲学者が抱いてきた、思考と社会と時代の関係性における謎にチャレンジし、スケール感のある、知的好奇心をそそる内容に仕上がっている。

編集長 尾中昭文

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ぼくの本棚 45:「出会い」の不思議 by 河合隼雄


19 3月

人生には多くの出会いがある。それは言葉だったり、人だったり、本だったり、家族だったりする。それぞれは直線上で出会う、運命的幸運なものばかりではなく、道草や無駄話をしながらの偶然の発見も多い。出会いはその質により、深い共時性(シンクロニシティ)を生む。河合氏のシンクロは東洋と西洋、心理学と宗教、精神と身体など多様性をきわめ、因果関係の探求は深く、研澄まされている。しかし、そこから響く氏の言葉は限りなく暖かい。不思議なのは「出会い」なのではなく、河合氏自身のことなのかもしれない。氏の言葉には、「出会い」の曖昧さを認めながら、しっかりとした「未来」を感じるからだ。

編集長 尾中昭文

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ぼくの本棚 44:成功はゴミ箱の中に by レイ・クロック、ロバート・アンダーソン


16 3月

紙コップのセールスマン17年、ラジオ局のピアノ弾きのアルバイト、マルチミキサーの会社オーナー。世界最大のハンバーガーチェーン・マクドナルドをつくったレイ・クロックの前半生の職業だ。レイはマクドナルド兄弟のレストランに出会った時、メニューがたった二つしかないレストランが、全米の主要道路に次々にできて、お金をどんどんかきだしてくれるイメージが脳裏によぎった。「未熟でいるうちは成長できる。成熟した途端、腐敗が始まる」を座右の銘にするレイにはこれだけで十分だった。「勇気を持って、誰よりも先に、人と違ったことをする」この時レイは52歳で、糖尿病と関節炎を患い、胆嚢のすべてと甲状腺の大半を失ってのスタートだった。成長可能性とやる気さえあれば、どんなビジネスでも、いつかは成功する美談のような話だ。しかし、事業の将来性を見抜く力となると別だ。成功と失敗を繰り返しながらも、常に困難を乗り越え、チャンスに柔軟に適応する楽観性と成功イメージを保ち続ける能力が必要だ。「誰よりも未熟であることを自覚し続けること」慧眼とはそういうものだ。

編集長 尾中昭文

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