ぼくの本棚 52:ソシュール by 加賀野井秀一

29 3月

「前向きで検討します」という政治家の言葉が、実は「何もしない」ことだったり、「今日は暑いね」という言葉が「窓を開けてくれないか」という要請だったりする。この手の多義的な意味を持つメタ言語は、我々のまわりにはたくさんある。言葉の本質的な意味が、文脈によってコノテーション(共示)を起こすわけだ。さらにソシュールは音素(言葉を形づくる音のエレメント)に示差的・関係的な本質があると考えた。なんとなく耳心地良い会話は、この音素に基づく音声学がベースになる。「マイ・フェア・レディ」でヒギンズ教授が、イライザの田舎くさい発音を矯正すると、オードリー・ヘップバーンがとたんに知的に見えてくる「あれ」だ。キャッチコピーなどで言われる音韻論とは違うが、ここではそんなこ難しいことは抜きに、言葉の意味的本質がこんなに楽しいものだったのか、という発見と感動を得られるだけで十分なはずだ。

編集長 尾中昭文

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