Archive for 2月, 2007

ぼくの本棚 32:世界最古の兵法書 孫子 by 中谷孝雄


28 2月

井上靖の風林火山は好きな一冊だが、「其疾如風、其徐如林」「侵掠如火、不動如山」というくだりを「孫子」に見つけた。紀元前6世紀だからこっちが古い。司馬遷の「史記」はこれより400年後に書かれている。これほど細部に渡った兵法書は世界で類が無く、「五輪書」と並び面白い。「夜中呼び声がするのは、恐怖心にかられているためである。軍中がざわめき騒がしいのは、将軍の威厳が重くないからである。わけもなく旗印が揺れ動いているのは、軍旗が乱れているからである。部隊長がどなっているのは、兵隊が戦いに倦んでいるからである。馬に兵糧米を食わせ、その馬を殺して肉を兵隊が食べているのは食料がないからである」己を知る観察力だけでなく、孫子は実戦の指揮にもあたった。「兵は国の大事にして、死生の地、存亡の道なり。察せざるべからず」無謀な戦争を起こしてはならないと、2500年も前に孫子は言っている。

編集長 尾中昭文

参考になったと思われた方、クリックしていただけると嬉しいです
にほんブログ村 本ブログへにほんブログ村 本ブログ おすすめ本へ

ぼくの本棚 31:諸葛孔明 人間力を伸ばす七つの教え by 姚磊(ヤオ・レイ)


27 2月

三顧の礼により孔明が仕えた蜀は、三国で最も小さく、内政問題が山積であらゆる条件が悪かった、と三国志にある。にもかかわらず、孔明は自分に厳しく他人には寛容で、知略に富み、次々に起きる難題を解決しながら、多くの人たちとの交流を大切にした。人間関係が様々な成功の大前提であることの見本みたいなものだ。本書は複雑な問題を単純化したり、決断力と行動力を高めるために、孔明が最後の土壇場で実践したことを集約している。著者が中国ビジネスの源流として、孔明を捉えるのには少し無理があるが、1800年前の乱世に生きた孔明が、難局において平常心を保ち続けていたことには、時代を超えて新鮮な魅力を感じる。

編集長 尾中昭文

参考になったと思われた方、クリックしていただけると嬉しいです
にほんブログ村 本ブログへにほんブログ村 本ブログ おすすめ本へ

ぼくの本棚 30:空海 言葉の輝き by 武内信夫・永坂嘉光・高岡一弥


26 2月

「人は我が身ひとつで生まれ来たり、そして我が身ひとつで死んで行く。まさに稲妻のように無情、一瞬のうちに現れ、一瞬のうちに消えてゆく」空海の言葉の行間を見事に映し出した、染み入るような高野山の写真詩集だ。「都の梅は春が来るよりも先に花開き、京の柳は春の盛りを待って葉を茂らせる。辺境の城は春の到来は遅く春花が咲くこともなく、辺地の砦は葉訳冬になって果実が実ることもない」高野の空は高く遠く広がっている。空海の言葉は澄み切っている。高野山の深い緑の匂いを感じる。こんな企画の本が、数多く売れる世の中になってほしいと心から思う。

編集長 尾中昭文

参考になったと思われた方、クリックしていただけると嬉しいです
にほんブログ村 本ブログへにほんブログ村 本ブログ おすすめ本へ

ぼくの本棚 29:建築家の講義 by レム・コールハース


23 2月

オフィスの正面に見えるプラダビルは、分厚いガラスで多面構成されたアートの塊みたいなビルで、風見鶏のように世界中からこのビルを目指して来る。買う人より写真を撮りに来る人の方が多い。建築したコールハースとはどんな人なのか、前から気になっていたが、ライス大学の講義録がでた。「建築は危険な職業です。なぜなら、建築は不能と全能を混ぜ合わせた有毒なものだからです。建築家は自らの幻想や夢を押し付け、実現するために、他人や周囲の状況に依存するという誇大妄想的な夢をほとんど例外なく抱いている」表参道を明治神宮のほうに降りていくと、・・・ヒルズ(?)が建っている。夜は建物表面がネオンになり、地政学的、歴史的意味があった匂いの断片も無い。建築家の使命とはいったい何なのだろうか。

編集長 尾中昭文

参考になったと思われた方、クリックしていただけると嬉しいです
にほんブログ村 本ブログへにほんブログ村 本ブログ おすすめ本へ

ぼくの本棚 28:フラット化する世界(上・下) by トーマス・フリードマン


22 2月

トップダウンの構造から水平な接続へ情報革命が起きている。それは政府や企業や人々のコミュニケーションや、組織間の結合の変化だけでなく、社会、政治、ビジネスで、これまでなかったモデルが次々に生まれている。世界のフラット化は時間がワープしているような早さで進み、幅広く、破壊的な力を持つ。市場での激変に適応するリーダーシップ、柔軟性、創造力の無いものは置き去りにされる。では旧態然とした国家、企業、社会にとって生き延びるチャンスはあるのか。本書はフリードマンの粘り強い取材力と洞察力によるところが大きい。具体的な示唆は無いが、環境や未来学の視点から見ても、単なる解説本の域は遥かに越えている。

編集長 尾中昭文



参考になったと思われた方、クリックしていただけると嬉しいです
にほんブログ村 本ブログへにほんブログ村 本ブログ おすすめ本へ