ぼくの本棚293

: マイケル・サンデル/これから正義の話をしよう

17 8月

今、なぜ「正義」なのか。

NHK教育TVでも放映されているからご存知の方も多いと思うが、
これはバラエティ番組ではなく、ハーバード大学で最も人気のある講義なのだ。

1人殺すか5人殺すかを選ぶしかない状況に置かれたとき、
君たちならどうするだろうか?
サンデルは学生たちに問う。

1人だけ殺すことを正当化していいか?
合理主義によって、確かに、ほかの4人は助かるだろう。

それとも多くの人が感じるように
そんな選択は許されないと思うか?
1人だけ選ぶことなんてできないんじゃないか?

サンデルの問いに
様々な国から来た、様々な人種の
学生たちは次々に自分の独創的な意見を言う。

学問とは真実や真理を問い続けることだ、と
サンデルの授業を見ながら、
何故かほっとし、納得する。
ここにはまだ「大学」がある。

学生の多くは戦争を経験していない。

そのため自己決定のプロセスに
共和主義(共同体的自己決定)か自由主義(自己決定主義)かを反復し、
その差異を見つけ、自分は何を基準に意思決定をしているのかを確認しなければ、
経験主義的な意思決定を越えることはできない。

米国は伝統的に共和主義(米国リバタリアニズム)だが、
共同体的な共和主義はすでに空洞化し、
現実は一人一人の自己決定に委ねられている。

これは今の日本にもあてはまる論理だと思う。
管総理は戦争が未経験なのに
なぜ過去に遡って、韓国にお詫びができるのだろうか。

戦争未経験だと認めた上で、
未来に向けて、お互いが何を学び合い、気づかなければならないか、
初めてその悲惨さも、自身の数少ない言葉で語れるはずだ。

戦争未経験者が、自分が関わっていない戦争を、まるで自分のことのように語る。
いまの日本には居心地の悪い、空洞化した論理や解釈がはしっている。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚292

東京大学i. school編/東大式 世界を変えるイノベーションのつくりかた

29 6月

タイトルは旧型の大言壮語的ベンチャー製造工場を連想させるが、
本書を読むとすぐに間違いだったことに気づく。

いや、それどころかイノベーターをつくるために教育が精密に見直され、
実質的な学問の質が確実に向上し続けていることがわかる。

本書は4 つのパートに分かれる。
パート1では世界を変える人材をつくるプログラム

パート2では観察とケーススタディ、未来の兆しを集め統合し、
シナリオや事業計画書を書くワークショップ

パート3では場の力の利用の仕方、アイスブレイクの方法、
多様化と統合化にデッドラインを設けたシミュレーション

パート4ではイノベーションのプロセス構造化、
アイディアを生み出す原点の情動に迫っている。

日本の会社の多くがイノベーションを起こさなくなって久しいが、
東大で近未来にイノベーションが起きそうな予感をさせる一冊だ。

あなたはイノベーションと聞いて何を連想するだろうか。
イノベーターと聞いて誰を思い浮かべるだろうか。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚291

松島修/聖書に隠された成功法則

21 6月

大成功を収めた人の多くが、その後うまくいかなくなるのはなぜだろうか?

著者はその答えが聖書にあり、
聖書には不変の成功法則が隠されているという。

自分の欲望だけで「自己実現」をするのではではなく
他者も活かす「神実現」を目指せば真の成功が来るのだという。

6000年前に書かれた旧約聖書は、地政学的にみても
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教に共通して使われている。
ベストセラーでもこれだけ多くの人に読まれている本はない。

聖書に「人は神から創られ、神に愛されている」とある。
人は、無条件に愛されている存在であることを
自覚することが大事で、
がむしゃらに努力することだけでは成功への道は開けない。

著者がいう神の視点とは、
高慢さを捨て謙虚さをもつこと、
真の謙虚さとは、神に創られた自分を信じること、
与えられた力を認めること、自信を持つこと、などだ。

本書は宗教者が言うきれいごとだけではない。
著者は日本最大級の顧客数をもつ投資コンサルタント。

本書は意図的に、旧約、新約聖書を混在させるなど、
宗教的見地からの解釈には多くの矛盾もある。

しかし、投資という最も危険なお金に携わるコンサルタントが、
一番重要なことは、自分のお金ではなく、他人を富ますことを考えなければ、
その後の人生がうまくいかないことを自覚している点に、本書の面白さがある。

人は習慣性から逃れられないため、それゆえの成功も失敗もある。

あなたが人生において、もし成功を強く望むなら
今の悪い習慣を思い切って捨て、
成功の習慣性を身につけることが一番早いと思う。

人生変えようともがいても
なかなか変える方法が見つからない時、きっと本書が役に立つと思う。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚290

佐々木俊尚/新聞・テレビ消滅

08 6月

管さんが首相になった。

2003年の衆院選で管さんが代表だった時、
僕が「つよい日本をつくる」
というキャッチコピーを創らせていただいた。

当時10%以下の支持率だった民主党が42%まで急進して、
今の民主党の基礎ができた時のことを思い返すと、感慨深いものがある。

その翌年、岡田さんが代表になり
参院選で「まっすぐに、ひたむきに」のキャッチコピーを創らせていただき、
自民党の数を逆転して、民主党が2大政党として台頭した。
どちらもテレビや新聞の力を最大限利用してできたことだった。

あれから7年も経ったのか。

あの時は「強い」という言葉がブームになり、
表紙に「強い」を飾った新聞や雑誌や本が乱立したが、
強い日本をつくることはできなかった。

管さんは首相になり「強い経済」をつくると言った。
あの時の続きがまさに今、始まろうとしているのかもしれない。

さて、世の中を見回してみると
これまでコミュニケーションの根幹を成してきたものが崩壊し、
自壊し、すごいスピードでネット・メディアに入れ替わろうとしている。

とくに400年の歴史を持つ新聞は顕著で、
米国ではすでに、ロサンゼルス・タイムズとシカゴ・トリビューンが破産し、
NYタイムズでさえ2015年までには破産すると言われている。

本書では米国から3年遅れの2011年に
日本でも新聞やテレビの利権の崩壊がかならず起きると言っている。

著者は、毎日新聞で事件記者を12年やっていただけでなく、
フリージャーナリストに転身してからのITの予見には
予断を許さないものがある。

これからメディアはどうなるのか。
メディアに洗脳され続けた日本国民は何を信じたらいいのか。

本書には、過激だが説得力のある
メディア・サバイバルの未来が描かれている。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚289 ティナ・シーリグ/20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学 集中講義

13 5月

もし何をしても失敗しないとしたら
あなたは何をやるだろうか。

もしいくつになっても人生を変えられるとしたら
あなたは何になるだろうか。

起業やイノベーションをして成功する人は
リスクに対して、ある種の無謀さと徹底した集中力を持っている人が多い。

リスクがあっても挑戦し、努力し、あらゆる壁を乗り越えるために
ストレスに耐えられる、目標達成型の成功指向をしているからだ。

では、大成功できない人は、一度しかない人生なのに何を怖れるのだろうか。
早く何度も失敗すれば人より多く学べるのに。

本書では、及第点では満足せず、さらに日夜努力し、
常に世界最高を目指す学生たちが、
スタンフォードには多くいることに喜びを感じる。

しかし一方で、日本に目を向けると、リスクを冒す若者が減り、
公務員をめざす安定志向者ばかり増える現実に
寂寥感を感じるのは僕だけだろうか。

「バカで愚かで怠惰で出来の悪い社員を評価しろと言っているわけではない。
クリエイティブな組織をつくりたいのであれば、何もしないことは最悪の類いの失敗だ。
想像力は行動から生まれる。何もしなければ何も生まれない」

本書には、「人生というルール」を破る勇気をくれる言葉が、確かにある。

編集長 尾中謙文

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